刮目呂蒙のブログ

都内在住の30代男です。時事問題や生活改善情報から、自分の周りのことまで。たまに持病(潰瘍性大腸炎)のことも。

『麒麟がくる』最終回を前に

こんにちは、呂蒙です。

今回は、NHK大河ドラマ麒麟がくる』の最終回を前にした感想などを徒然と。

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キャストについて

麒麟がくる』は私にとって『真田丸』以来のヒット大河となりました。

特に織田信長染谷将太さんがいいですね。合理主義ながら人の気持ちを汲めず、(母)親の愛情を得られずに育った承認欲求の塊という新しい信長像を大変上手に演じておられます。現代でいうと発達障害のような感じですね。最初はどうなのかなと思いましたが、確かにこれが「土岐源氏」で儒学の教養もある、元足利将軍の奉公衆の明智光秀から見た、尾張の金持ち守護代庶流の二代目・信長という感じでしょう。確かに「将軍は帝の門番」などと言いそうです。父信秀の代から描く設定も丁寧だし、演技も説得力があって、歴代最高の信長かもしれません。

一方の長谷川博己さんは、理知的で口を開けば率直ながら口数は多くなく、志の高い明智光秀を見事に演じておられます。ただ、なんとなく既視感もあります。TBS日曜劇場の『小さな巨人』の香坂真一郎役に似ている気がするんですね。香坂は正義感が強く、理知的で基本は有能な刑事でしたが、推理は論理的なようでいて肝心なところを外しまくっていました。ここが、佐々木秀吉の配下に松永久秀との密会をまんまと尾行されたり、秀吉に大口をたたいた挙句に荒木村重を説得できなかったり、本能寺の変のあと細川藤孝筒井順慶の意向を読めずに助力を得られなかった光秀にオーバーラップしてくる気がします。

他にも、谷原藤英、ユースケ義景、伊藤義龍、村田一鉄、向井義輝など印象深いところです。

ストーリーについて

思い返すと、このドラマの光秀は、上記のような信長を桶狭間の勝利に立ち会って褒めたり、金ヶ崎の引き際では励ましたりして、大変上手に信長の懐に入り込んできました。なかなか他人から欲しい態度を得られない信長にとって、帰蝶と並んで最大の理解者であった光秀を頼りにするのは必然の流れでしょう。

しかし、もともと「大きな国を作る」話を笑顔でしていたときから、二人の会話は微妙にずれていました。

信長は、当時から、戦に勝って褒められたい気持ちが強く、戦が嫌いではなかった。基本的に戦に勝ち続けることで結果的に、光秀の言う「大きな国」を作るという意識。その先は特に考えておらず、「大きな国」を作るための戦に手段は選ばない。徹底的に勝つためには女・子供も必要なら殺してしまう。

一方の光秀は、少なくとも金ヶ崎の戦いで「必要な戦」に目覚めるまでは、できる限りあまり戦をしたくない様子でした。戦のない世のための「大きな国」。したがって、あくまでその手段である戦で、罪のない女・子供まで殺したくないわけです。

そんな光秀も、「信長とならそなたやれるかもしれぬ」という斎藤道三の遺言に従って、戦のない「大きな国」を作るためのバディとして、帰蝶と共に織田信長を盛り立ててきました。

光秀は、できれば、おそらくは土岐源氏の武士として、それからドラマで明確に描かれていたところでは儒学を学んだ者として、足利将軍を頂点とする秩序の下に、信長の実力でもって天下を平穏に安んじたかったところでしょう。しかし、足利義昭摂津晴門などに翻弄されて幕府の悪弊を破れなかった上、光秀よりも早く信長と性が合わないことを自覚して袂を分かってしまった。光秀としては、仏像を破壊して将軍御所を作るようなズレた感覚の信長には危うさを抱きつつも、自分がバディならなんとか操縦できると期待していたため、義昭にはなんとか信長の上の立場に鎮座していてほしかったのでしょう。しかし、義昭は虫も殺したくないような現実離れした理想を掲げつつ、信長と性が合わないことをもって他の大名を巻き込んで戦を拡大する方向を選んでしまいました。光秀は、義昭の下で信長と大きな国を作ることが叶わないとなったら、いったん、義昭と三淵藤英を見限って信長を選びました。

しかし、義昭を追放した信長は、光秀の想像を超えて大きくズレていきました。光秀が「信長を説得する」などと言ってはみるものの、思ったとおりにならないことが増えていきます。そして、そんな信長を見限る動きも増えていきます。松永久秀しかり、荒木村重しかり、波多野秀治しかり、佐久間信盛しかり。このあたりは、おそらくコロナの影響で数回削られ、端折られた部分だと思うので、できれば完全版で見たかったところです。そして、光秀は、時の帝からも信長が月に上らぬよう見届けることを期待され、信長自身からも嫉妬交じりの暴力を受け、逆に徳川家康にこそ理想の統治者像を見出だしたりもして、だんだんと気が変になり、奇妙な夢をみるようになってきています。帰蝶からは、織田信長をここまで担ぎ上げたものの責任として、暗殺することを示唆されてしまいます。もともと、光秀は独力では何の力もない武士でした。丹波・南近江の大名となり、惟任日向守となれたのも、信長の軍団に入ったおかげ。冷静になれば、信長あっての光秀ということは分かるはずですが…。

いよいよ本能寺

いよいよ本能寺が明日に迫ってきました。

ここまでくれば、「仁のある政治をする為政者が現れると降り立つ聖獣・麒麟を呼ぶのは、一体どの戦国武将なのか」というドラマの大筋が浮かび上がってきますね。

光秀は、まず信長と大きな国を作ろうとして、「仁のある政治をする為政者」を足利義昭とし、次いで、信長自身を「仁のある政治をする為政者」としようとすることで、麒麟を呼ぼうとしていたのだろうと思います。しかし、自分が半生を掛けて行ってきたこれらが叶わないとあって、おそらくは徳川家康を「仁のある政治をする為政者」とすることを夢見つつ、そのために、家康の「怖い存在」である(丹羽長秀らも家康の暗殺を企てようとしていた)織田信長を排除しようとするのかもしれません。

信長からすれば、自分が変わったとは夢にも思っておらず、光秀と若き日に誓った「大きな国を作る」ことを自分流に実行しようとしてきただけでしょうから、最近は光秀と意見が違うことが増えていたとはいえ、寝耳に水に近いところでしょう。染谷信長に用意された台本と、その解釈を施した演技が見ものですね。

グリーンカレーで痛恨の一撃とか

こんにちは、呂蒙です。

今回は、ちょっと長文が体力的に厳しいので、簡単に最近のレビューをして終わりにします。

A級順位戦8回戦の結果

まず、昨日記事にしたA級順位戦ラス前ですが、結果は以下のとおりでした。

斎藤慎太郎八段(7勝1敗)

広瀬章人八段(6勝2敗) 羽生善治九段に勝利

豊島将之竜王(5勝3敗) 佐藤康光九段に敗北

佐藤康光九段(4勝4敗) 豊島竜王に勝利

佐藤天彦九段(4勝4敗)

糸谷哲郎八段(4勝4敗)

菅井竜也八段(4勝4敗) 三浦弘行九段に勝利

羽生善治九段(3勝5敗) 広瀬八段に敗北

稲葉陽八段(2勝6敗) ▼降級決定

三浦弘行九段(1勝7敗) 菅井八段に敗北 ▼降級決定

降級2枠の争いは、ラス前に決着しました。

今年は「一番長い日」は3月でもないし、残留争いがないので、一番長いというほどでもないかもしれません。

とはいえ、順位1枚の差が天と地ほどの差を生むほど大きいので、消化試合は一つもありません。稲葉八段がラス前に降級決定したのは、羽生九段より順位が低いため、3勝6敗で並んでも上回れないからですしね。

挑戦争いは、斎藤八段と広瀬八段に絞られました。斎藤八段は負けてもプレーオフ以上が確定しています。2人での挑戦争いには順位の差は関係ありません(3人以上だと高順位のほうが有利なシステムになります。)。

それにしても、羽生九段がA級8位だなんて信じられません。時代の変化を感じます。最終戦本当に頑張ってください!

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グリーンカレーで痛恨の一撃

私は潰瘍性大腸炎ステラーラ治療中の再発例なのですが、

先月ステラーラ2発目の皮下注射を打ち、ステロイドプレドニン)投与が終わりました。

しかし、もともとステロイド依存性の体質で秋に再発した疑いが強いところでして、再発を受けてステラーラは打ったものの、プレドニン投与が終わった途端にまた排便回数が1日10回を超えたり、腹部膨満感や不穏感がぬぐえなくなったりしています。腸内にガスがたまりすぎていて、頻繁に急な便意みたいなのが来ます。トイレに駆け込んでもガスがいっぱい出る一方、便はちょっと出るだけ。だけど完全にオナラだけとは分からず、怖い。ステラーラ頼むから効いてくれと思います。遅効性らしいんですが。

不穏感の原因は、不安を持ちすぎているんじゃないか、他のことに集中していれば大丈夫なのではとかいろいろ思いますけど、確かに何か感覚が襲ってくるんですよね。外見上は平気そうなのもかえってつらいところです。

そんな私ですが、刺激物がよくないとはいえ、潰瘍性大腸炎ってクローン病と違って食べ物の制限はたいしてありませんなんていう説もあるようでして。いや、私は体験上、食べ物で明らかに体調違うよねとは思うのですが。ホエイプロテインの泡まみれのドリンクを泡ごと飲んだらかなり体調悪くなります。

ただ、どうしても久しぶりに食べたくなって、そんな説もあるしと思って、昨日タイ料理のグリーンカレーを食べてしまったわけです。

そしたら本当に夜中に下痢連発になってしまい、寝る前に4回下痢して、就寝中にも4回起きて下痢しました。ここまでひどいのは久しぶりでして、これは明らかにグリーンカレーバイキルト痛恨の一撃でした。寛解期でもないのにバカだったと思います。

というわけで今日は寝不足で眠いので、この辺で筆を置きます。おやすみなさい。

今日は将棋のA級順位戦ラス前【斎藤八段挑戦なるか】

今回は、今年の将棋のA級順位戦の進行状況と私の期待を紹介する。

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目次

1 A級順位戦終盤の日程について

将棋ファンなら抑えている日程だと思うが、今日はA級順位戦の「ラス前」一斉対局だ。

10人で争われるA級順位戦は、他のクラスの順位戦と違って、7回戦までは個々の対局ごとに個別に日程が組まれる。

しかし、昇級と降級に直結する8回戦(ラス前)と9回戦(最終戦)は、一斉対局となる。

特に、最終9回戦の日は、「将棋界の一番長い日」と呼ばれ、毎回熱戦が繰り広げられ、悲喜こもごもとなることは将棋ファンには周知のとおりだ。

たいてい3月に日程が組まれるため、A級経験者の先崎学九段は、3月は昇級・降級をかけた棋士がライオンになる(獅子のようになる)月だという趣旨のことを書かれている。このことが直接、羽海野チカ先生の将棋漫画『3月のライオン』のタイトルの由来(の一つ)になったのかどうかは不明だが、同作の将棋の監修者である先崎九段は、このタイトルの言葉が3月の棋士たちにうまくあてはまると思って、同作のコラムに上記のようなことを書かれたのだろう。

もっとも、今年の「将棋界で一番長い日」は2月26日なので、諸兄にはぜひとも注意されたい。

 

2 本日8回戦の状況と私の期待

さて、今日のラス前での状況を簡単にまとめておく。

 昇級争い

昇級争いは、上から、

10位・斎藤慎太郎八段(6勝1敗)

1位・豊島将之竜王(5勝2敗)

2位・広瀬章人八段(5勝2敗)

の3人に事実上絞られていると思う。

A級初参加の斎藤八段が1敗と好調であり、このまま挑戦できるか要注目だ。

知的でスマートなルックスで、好青年と評判でもあり、また新たなヒーロー誕生ともなり得る。

超人的な藤井聡太二冠ほどではないにせよ、将棋界でもトップクラスの詰将棋の力を持っているともいわれる。個人的には、斎藤八段は、中終盤の特に秒読みの局面での精度が「令和4強」(藤井二冠、渡辺明名人、豊島竜王永瀬拓矢王座)と比べ課題にみえるが、地位が人を作るところもあると思うので、勢いで挑戦してもらえればと思う。

あとの2人はタイトル挑戦の常連なので他言を要しないだろう。

 残留争い

次に残留争いは、下から、

7位・三浦弘行九段(1勝6敗)

8位・稲葉陽八段(2勝5敗)

9位・菅井竜也八段(3勝4敗)

6位・糸谷哲郎八段(3勝4敗)

5位・羽生善治九段(3勝4敗)

3位・佐藤康光九段(3勝4敗)

まで可能性がある。最高棋戦の地位を竜王戦に譲った今でも、名人戦順位戦のクラスの持つ影響力は多大なものがあり、それを掛けて競う残留争いには熱い人間ドラマが見られる。

三浦九段は残り2連勝しても、糸谷八段を上回ることができないので、稲葉八段・菅井八段の2名が降級するパターンにならない限り残留ができず、苦しい立場だ。とはいえ、今まで名人挑戦経験もあるし、降級しかけた時も驚異的な残留力を見せてきた三浦九段なので(その時代わりに降級するのが決まって深浦九段だったのも将棋ファンには有名な話だろう。)、今期も粘り腰に期待したい。

そして羽生世代のファンである私からすれば、羽生九段・佐藤康九段両名の残留は悲願だ。本当は挑戦争いに加わってほしい2人であり、せめて残留は絶対に果たしてもらいたい。

特に、佐藤康九段は会長職が忙しく、ほぼ全く研究の時間を取れないというのであり、研究合戦の現代将棋では相当苦しいはずだが、長年培ってこられた佐藤将棋の独自性と、誰とも読みが合わないという感性が佐藤康九段を助けているのだろう。これを若いころの貯金の食い潰しというと嫌な表現であり、私は、佐藤康九段の愚直で長期的な投資がいままさに実を結んでいるのだと捉えている。

羽生九段は、2勝4敗で迎えた7回戦で稲葉八段に勝ち、なんとか多少なりとも有利な位置で8回戦を迎えることができた。この一局は終始鬼のように強い往年の羽生九段が見られ、とても興奮した。もっとも、レーティングでこそ令和4強の下の5位前後に安定して付けている羽生九段だが、さすがに50歳になり、先日の棋聖戦予選の森内俊之九段戦のように、不出来な対局も少し増えてきた印象だ。羽生九段はもちろん長時間の棋戦も強いのだが、NHK杯戦のような早指しから王座戦のような1日制で夕食後に佳境に入るくらいまでの長さの棋戦のほうがお得意にも見える。羽生九段がB級に降級されるようだとさすがに事件なので、是非この8回戦で残留を決めて、将棋ファンを安心させてほしいと思う。

 執筆現在の状況は

さて、現在の様子だが、この記事を書いている2月3日午後11時30分の段階では、2局が終局している。朝から対局しているのに、日付が変わるのが普通という恐ろしい世界だ。50代の羽生九段・佐藤康九段や、40代後半の三浦九段は体力的にも相当きついだろう。頑張ってほしい。

佐藤天彦九段(4勝4敗)-○糸谷哲郎八段(4勝4敗)。

糸谷八段は早見え早指しなので、持ち時間6時間の順位戦であっても、早く終局することはある。もっとも、佐藤天九段は粘り強い受け寄りの将棋であり、そういう意味ではちょっと珍しく早い終局ともいえそうだ。

稲葉陽八段(2勝6敗)-○斎藤慎太郎八段(7勝1敗)

勢いの差が出た格好か、斎藤八段は初挑戦に大きく前進した。一方、稲葉八段は残留へ向けてますます苦しくなってしまった。

実は30代前半はプロ棋士にとって難しい時期と言われており、いったん成績を落とす棋士が多い。そこから再び這い上がれるかはそれぞれだが、稲葉八段はこの1月にめでたく結婚されたところであり、新婚パワーで這い上がれるのではないかと思う。頑張ってほしい。

そろそろ寝る時間なのでここで筆を置く。明朝の結果が楽しみである。

日本旅行業協会は東京オリンピックを国際交流再開の契機にと期待している

今回は、日本旅行業協会会長の2021年の年頭所感が興味深いので紹介する。なお、自民党の二階幹事長が会長なのは「全国旅行業協会」(ANTA)であり、日本旅行業協会」(JATA)ではないので注意だ。前者はより地域密着、後者はより全国・海外を志向するというような違いがあるという。とはいえ、業界としての利害は相当一致するところだろう。

なお、旅行業を営むならば、「全国旅行業協会」か「日本旅行業協会」のどちらかに加入しない限り、初期費用に当たる「営業保証金」として、協会加入の場合の「弁済業務保証金分担金」の5倍の額の寄託を要するという。そこで、創業資金を節約したい旅行業者はどちらかに加入するようだ。

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目次

1 官邸への働きかけによりGotoトラベル事業を勝ち取った旅行業協会

 緊急事態宣言の延長で苦しい旅行業界

本日(2月2日)、東京等を対象とした緊急事態宣言が3月7日まで延長された。

今日の東京の新規感染者は556人。先週火曜日から約半減であり、指標の一つである陽性率はステージ4からステージ3相当に下がっている。宣言の効果は出ているといえそうだが、医療提供体制は依然として逼迫しているという。医療提供体制がボトルネックなのは昨春から変わらないようだ。

宣言延長でダメージを受ける人たちとして、直接営業時間短縮を要請されている飲食店の声が多く報道されている。実際には、1日1店舗当たり6万円の給付では足りない、地代家賃の高い場所や中規模以上の飲食店が本当に苦しいところだろう。

が、宣言には不要不急の外出自粛の要請や、7割テレワークの推進なども伴っているから、鉄道などの陸運や旅客業などの空運、そして旅行業も苦しい時間が続いているはずだ。特に、旅行業にとっては、宣言の解除はGotoキャンペーンの再開と事実上セットにされていたようだから、人口の多い地域の宣言が延長されたショックはとても大きいのではないかと考えられる。

 Gotoトラベルの有無は旅行業界にとって死活問題

感染を拡大させたのではないかと批判の強いGotoキャンペーンだが、個人的には、イートとトラベルは別に考えたほうが丁寧だと思っている。マスクを外した飲食によって飛沫感染を直接引き起こしかねないイートと、その機会を増加させるかもしれないだけのトラベルとは質的に違うと思うからだ。

国民へのメッセージや報道に分かりやすさが求められるということから、Gotoイートと一緒くたにされてきた感があるが、旅行業者にとっては、売り上げが落ち込み、コロナ対応の経費が増加し、消費マインドが冷え込んでいる現状、カンフル剤になり得るGotoトラベルの有無は死活問題だろう。

そういった推測を裏付けるものがあった。

こちらの日本旅行業協会(JATA)会長の年頭所感である。

www.jata-net.or.jp

上記の推測を裏付けるものといえそうな箇所を引用する。

JATAは「企業存続のための支援、自粛の緩和、大規模な需要回復施策の実施」を官邸にお願いし、雇用調整助成金の特例措置と期間延長、Go Toトラベル事業の実施等に至りました。

 

需要回復施策を「官邸にお願いし」てGotoトラベルの実施に至ったというあたり、とても率直で分かりやすい文章だ。「企業存続のため」という部分からは、事態の深刻さと必死さが伝わってくる。

なお、私の探し方が悪いのかもしれないが、全国旅行業協会のHPには、二階会長の年頭所感は見当たらなかった。

 

2 五輪で世界の客を呼び込みたい旅行業協会

 外国人の日本旅行も旅行業協会の事業対象

上記のように率直な日本旅行業協会会長の年頭所感には、五輪についての興味深い記載もある。

国際交流の再開のためには、インバウンドとアウトバウンドの両輪の戦略が必要であり、一歩踏み出すためのJATAの役割を全うしなければなりません。

観光業界にいうアウトバウンドというのは、国内客の海外旅行需要のことだ。 

旅行業協会は、日本国内での旅行・観光だけでなく、外国人の日本旅行や、日本人の海外旅行をも事業の対象とし、戦略を練っていることが改めて分かる。考えてみれば当然だが。

 東京五輪での観客参加、そのための観光客の来日を想定

そしてここだ。

今年の夏には、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会があり、200を超える国や地域の人々が日本を訪れます。単なる大型スポーツイベントのような位置付けではなく、旅行業界全体で国際交流再開のきっかけとなるように取り組んでいかなければなりません。 

おお。今年の夏にはオリンピックがあり、「200を超える国や地域の人々が日本を訪れます。」「旅行業界全体で国際交流再開のきっかけとなるように取り組んでいかなければなりません。」

そうか。日本旅行業協会会長は、東京五輪が完全な形で開催されることを前向きに想定し、その実現を期待し、旅行業界全体での取組をしようとしているのだ。

外国人の日本旅行も旅行業という事業の対象なのであり、東京五輪は本来、インバウンド需要が大きく盛り上がる好機のはずだった。五輪を見に日本に来る外国人は、日本企業の飛行機にも鉄道にも乗るし、そしてもちろん、日本のホテルや旅館などのどこかで宿泊するはず。そのつもりで、旅行業界・観光業界は、何年も前から準備にかかり、たくさんホテルも建てたし、旅館を改装したし、外国語の研修もしたし、ウェブサイトも作り直したし、ツアーも組んだし、人も増やしていたのだろう。

そのような旅行業の方々からすれば、五輪を中止するなどもってのほかだし、無観客やオンラインなどで開催するのも言語道断、意気消沈だろう。なんとかコロナを世界的に撲滅し、選手だけでなく観光客の行き来も低いハードルで可能になることを願っているのだろう。

そのために、昨年官邸にお願いしたように、今年もさまざまな取組をしていくのだろう。

なお、自民党の二階幹事長は、下記の報道のように、観客参加を希望し、無観客での開催に否定的な見解を示したとされている。

www.nikkei.com

 

ちなみに、視聴率を気にしてハイレベルな選手が十分な準備をして世界各国から派遣されるかどうかを主に気にしていると思われる放送事業者は、懸念の方向性が旅行業者とは少し違うはずで、互いに同床異夢かもしれない。

 

3 まとめ

現在、東京五輪については国民の多くが2021年の開催に悲観的なようであり、中止の決定の遅れによる経費の膨らみを避けるためとして、早期の中止決定が望ましいかのような議論も見かける。誰が中止や再延期を決めるかのチキンレースになっているのではないかというような見方もあるようだ。

夏の甲子園のように感染拡大期に流れる雰囲気の影響もありそうだが(春の感染拡大期に不開催が決定されたものの、結果的には開催可能だったという論調もある。)、ワクチンの承認や接種の世界的な進行具合、それに必ずしもアスリートを優先しない接種の優先順位設定などから、客観的に考えても心配される状況であるとはいえるだろう。

しかし、東京五輪を選手生活の大目標あるいは集大成として、自分に勝つか負けるかという限界のところで厳しいトレーニングを積んできた競技選手たちには、中止となるのは残酷というしかない。「希望」の持つ力を強く印象付けた池江璃花子選手のメッセージからも、こういったアスリートの考え方が読み取れる。私自身、潰瘍性大腸炎で入院闘病中だったので、この池江選手のメッセージには強く勇気づけられた。

www.jiji.com

また、選手だけでなく、開催を前提として多額の先行投資をしてきた経済界にとっても、中止や無観客での開催は著しい打撃になり得る。

経済効果を計算してペイするようなら、各国の代表選手にワクチンを打ってもらうための費用負担を日本が申し出るなどの対策もないではないだろうが、各国の代表選手団の派遣どころか、代表選手の選定のための国内大会の開催自体ができていない国もあるようで、完全な開催への道筋は険しい。もしかすると早期中止論者のいうように、サンクコスト(今までに掛けた費用)が一番安く済むという可能性だってある。

それでも、関係各位には、開催の当否を決断すべき時期までには、ありとあらゆる知恵を絞って、最も有意義かつ効果的な選択をしてもらいたいと思う。仮に、参加国や渡航可能国、渡航可能条件等を絞るなどして小規模にせよそれなりの競技レベルも経済効果も確保して開催するとなれば、世界平和の象徴とされつつ商業化の懸念を持たれてきた五輪の意義付けを積極的にし直すチャンスにもなるかもしれない。

読書法は①本の内容と②読書の目的と③可処分時間を総合して選択する

読書は知見を広げてくれる。他人が時間を掛けて考えたことを吸収できるので、他人の頭を借りることができるのと同じだ。編集者と共に、分かりやすく構成もしてくれている。読書の効用は控えめに言って最高だと思うが、用途によって読書法は使い分けるべきだ。今回は、数種類の読書法の使い分けについて紹介する。

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目次

1 読書の現代的位置付け

昔は読書こそが至高の勉強法だったが、現代では、読書もあくまで情報収集ツールの一つという地位に落ち着いている。インターネット記事やYouTube動画などの無料の情報収集ツールがここ数十年で極めて優秀なものになった。もしかすると、情報は今後基本的に無償で手に入るようになるかもしれない。少なくとも、大衆的な関心事項に関する知識はそうなりそうだ。再生数やプレビュー数が稼げるからである。他方、小さなセミナーから大学まで、あるいは大講堂のものからオンラインまで、規模はさまざまだが、講義も、まだまだ情報収集ツールとして健在だ(小規模の有料のものは、情報弱者向けという立ち位置にもなりつつあるが、個別的・パーソナルな対応をしてもらえるという意味ではまだ存在意義があるだろう。)。

読書の媒体たる本も、有料の情報収集ツールという性質が際立つようになり、一方では無料では提供できない価値を提供しようとしてくれる要素もありつつ、他方では無料で得られる情報を単にまとめただけの内容について、お金を使ってもらおうと、できる限りキャッチ―な題名にしたり、帯に有名人の推薦を得たりという小細工もますます弄するようになってきた。このような中では、無駄な本は買わないようにしたい。もっとも、安い本ならば、買うかどうか悩む時間のほうがもったいないかもしれないが。

 

2 読書法の使い分け

そんな中では、本も大雑把に言えばいくつかの種類に分類できると思う。

①細かく論理を追って必要な知識を覚え込むべき専門書・教科書類

岩波新書などのように、分厚くはないが読み応えのある本

自己啓発本やハウツー本など、作者が本当に言いたい内容が数テーマに限られる本

例えばこのように内容的に分類した本について、読書の目的と可処分時間とを考慮して読書法を考えると、以下のようになる。

 精読

仕事や学業などのため十分な理解度と穴のない知識を身に付ける目的で①の本を読むときは、可処分時間などと言わずなんとか時間を作って、精読するほかない。

精読といっても方法はいろいろある。一般的には、まず全体をざっと読んでから細部をゆっくり読むのがいいと言われるが、民法学の大家・我妻榮先生は、頭から少しずつ理解できるまで読み込み、理解できないうちは先に進まなかったという。いずれにしても、精読というのは、基本的には繰り返し読んで頭に叩き込むしかないと思う。最後は目次まで覚え込み、目次によって項目ごとの内容がよみがえってくるくらいにするのが究極の目標になる。

 飛ばし読み・拾い読み

③のような本はこれで十分だ。具体的には、目次をゆっくり見て内容の目星を付け、特に興味がわいた箇所だけを目でざっと流して読み、その中でも特に気になった箇所を拾い読みする。そこを読んで、作者の言いたいことをつかみつつ、文章の出来や論理の緻密さなど、要するにその作者の本がもう少し時間を掛けて読むに値するかどうかも見極める。このような飛ばし読みは、紙の本で、眼と手を使って行うのがベストだが、電子書籍でもジャンプ機能を使ってなんとかなる。②のような本も、③に比べると読みごたえが高いものが多いが、その本に掛けられる時間が少なければ、飛ばし読みでもしないよりはマシだという考えから、飛ばし読みをしてお茶を濁すこともある。

 聴読

②のような本を空いた時間でしっかり読みたいなら、聴読がおすすめだ。これは、電子書籍スマホにダウンロードして、スマホ視覚障害者向けのTalkback機能を使って一言一句を音読してもらう方法だ。先日紹介したTWS(トゥルーワイヤレスイヤホン=完全独立型イヤホン)を使えば、洗濯物を干しながらでも歩きながらでも電車に乗っている最中でも、あるいはスーパーで買い物をしている最中でも、本を聴くことができる。読み上げ速度を変えることもできる。注意点として、一言一句を読み飛ばさないが、漢字の読み方を多少間違うことはあるから、そういうつもりで聴く必要はある。また、自分のスマホのTalkback機能の起動方法と、Talkback機能使用中の操作方法をきちんと覚える必要がある(androidスマホの場合、スクロール方法が二本指になったり、選択がダブルクリックになったりと変化するので、慣れるまでは戸惑う。)。すぐにスリープしないように、設定を変えておく必要もあるので注意してほしい。

なお、この方法で上記③のような本を通読することもでき、②のような歯ごたえのある本よりも気楽に読めるが、③のような本の多くは繰り返しが多かったり内容が薄すぎて一言一句を読むに値しないので、だんだん通読する無駄の多さが嫌になるだろう。

 

3 まとめ

以上のとおり、今回は本を極めて大雑把に3つに分類したうえ、読書法も3つしか紹介していない粗々の内容になった。

これを自分の読書法を考えるたたき台にして、いろいろ考え、試してもらえれば幸いだ。

郵便局ホームページの国際郵便に関するお知らせはものすごい更新頻度だ

今回は、コロナ禍で国際郵便が受けた影響を少しばかり紹介する。

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EMSは米国に送れなくなった

知る人ぞ知る世界だが、国際的な郵便や荷物の送付の方法はいろいろある。

その中で、正規の郵送方法の一つであり、最優先・スピーディーが売りなのが「EMS」(国際スピード郵便)だ。

世界120以上の国や地域に、30kgまでの書類や荷物を送ることができるという。最優先に扱われるので、国際書留郵便などの他の郵便メニューに比べて到達が速い。

ただし、それもコロナ禍以前の話である。

世界的なコロナ禍での航空機の減便・運休に伴い、米国宛の国際郵便物は、2020年前半から大幅な遅延が生じていた。

そして2020年4月24日以降、EMSが米国に送れなくなったのはこの界隈では有名な話だ。

国際郵便のお知らせの頻繁な更新

しかし、もちろんそれだけではなかった。コロナ禍では米国以外の国や地域にも、EMS含めさまざまな国際郵便の遅延や引受停止が生じるとともに、こまめな引受再開も行われていたのだ。

その経過が分かるのが、郵便局ホームページの国際郵便の「お知らせ」ページだ。

2020年の欄をご覧いただくと、実に頻繁なお知らせの更新がされたことが分かるだろう。コロナ禍における郵便局の努力の爪痕といっていいかもしれない。

www.post.japanpost.jp

コロナ禍の現状では、自分が国際郵便を送るとき、郵便局の制度として何が使えるかは、送るタイミング次第で大きく変わってくるということだ。このお知らせページを使いながら、十分に調べるといいだろう。EMSは関税の支払方法が受取人一択になるところ、差出人側で負担したい場合はUGXを使うことになろうし、小型郵便物をEMSよりも安く送りたいなら国際eパケットなども選択肢になる。それらの運用状況はどうか、なども利用前に調べておこう。

正規の郵送という方法の縛りがないなら、FedExフェデックス・国際宅配便)などの代替手段もある。貨物の追跡サービスも使えるので便利だ。

まとめ

コロナ禍で、日本でも電子契約などのサービスが進んでおり、必ずしも物理的な代表者の押印という手続が必要なくなっているようだ。

www.cloudsign.jp

だが、そのようなICT時代の昨今でも、どうしても書類の原本を送らなければならないというニーズはまだある。

そんなとき頼りになる事業者の一つが郵便局であり、社会的に重要なインフラだ。

幸い、上記のように情報更新の頻度も頻繁であり、郵便局もその使命に応えようとする姿勢がうかがえる。ぜひ活用しよう。

弁護士成年後見人信用保証制度ができた

今回は、弁護士が成年後見人として故意に横領などで財産損害を与えた場合に保証される制度ができたということを紹介したい。

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ところで、上記のイラストは、いらすとやさんの「財産管理をする成年後見人(親族後見人)」というものだ。相変わらずいらすとやさんの話題カバー率には舌を巻く。

今日をもって9年間の定期更新を停止するという。ゆっくり休養してほしいところだ。

nlab.itmedia.co.jp

目次

1 利用しにくい?成年後見制度

判断能力が常時欠けるようになった人(認知症が進んでしまった人や、重度の知的障害がある人など)が契約などの意思決定をしたいとき、利用するのが成年後見制度だ。

利用しにくいという声も聞かれるが、その声の多くは、認知症等になった本人ではなく親族の声だろう。なぜなら、本人はそういう声を発することができないくらいに能力を失っていることが多い。それに、能力を失う前に信託や任意後見制度で備えているなら、そういう声は出てきにくいからだ。

成年後見制度において、認知症になった本人の意思・身上に配慮して、本人のために契約などを代理し、財産を管理するのが成年後見人だ。

成年後見人は、本人のためにその財産を使う。本人のためとしてお金を支出していいかどうか迷ったら、後見監督人や家庭裁判所に聞いて、ダメかどうかを確認する。その文脈の中で、親族の希望と合致したら、親族の希望する方向でお金を使うこともある。そういう制度なので、親族からすれば、成年後見人がつくと、本人のお金を左右するのに高いハードルができたように見えるのだ。民法個人主義だから、親のお金は親のお金、それは分かる。分かるけれども、今までの経過からすれば、本人の気持ちが確認できればすぐ希望どおりお金を使えるはずのに、成年後見人が付いたら使えなくなると。なんなら、確認などしなくても、本人が反対するはずがないのだから、お金を使えるはずなのに、その邪魔になる、と。

そんな気持ちからか、成年後見制度は利用しにくいという声も聞かれるようだ。

 

2 弁護士や司法書士等の専門職が成年後見人になることが多い

そういう親族にとっては、成年後見人に誰がなるかというのは強い関心事だ。親族自身や、自分と仲のいい親族が成年後見人になれれば、家庭裁判所からの監督は受けるにせよ、本人のお金を自分の管理下における。

しかし、最近は、弁護士や司法書士などのいわゆる専門職が、成年後見人になることが増えている。専門職が成年後見人になれば、本人のお金は専門職の管理下に置かれる。それは家庭裁判所がその必要があると判断したのだから、仕方ないのだが、本人のお金を家族で管理することはできなくなる。

また、専門職が成年後見人になれば、無料ではやってくれない。専門職は家庭裁判所に1年ごとに報酬を請求し、家庭裁判所が決めた報酬を本人の財産から受け取ることになる。(実は、親族が成年後見人になった場合でも、報酬は請求できるのだが、請求しない人が多いようだ。)

ならばせめて、選ばれた専門職にはきちんと本人のお金を管理してほしい。一般には、専門職というだけあって財産管理の識見があるし、成年後見制度の正しい使い方もよく知っているはずだ。また、専門職が他人のお金に手を付けたりすれば、資格を失うようなリスクがある。だから、実際に大多数はきちんとお金を管理してもらえる。

ところが、ごく一部には、成年後見人の権限を濫用して、本人のお金を着服してしまう専門職もいた。そういう専門職に当たってしまった本人と親族は、本当に気の毒というしかない。

そういった事件の報道が成年後見制度への信頼を傷つけてきたのも事実だ。

 

3 弁護士の成年後見保証制度ができた

 先行していた司法書士団体

成年後見というのは、専門職側から見ると、いわゆるプロボノ活動の一種で、あまり利益になる制度ではないという。専門職も民間の自営業の人々であり、普通に事件・案件を受けているほうが、事務所の経営には利益が大きい。しかし、国家資格の社会的使命感から成年後見人の候補者名簿に登録しているという人も多いようだ。特に、地方の弁護士・司法書士は、他に成り手がいない案件について、責任感から後見人を引き受けていることも多いらしい。

もっとも、それは専門職内部の事情であり、引き受けるからにはきちんとしてもらいたいし、その引受け体制を専門職団体で作っているのであれば、専門職団体の内部自治としても、そういった着服・横領の事件が起きないようにしてもらいたいというのが利用者の見方だろう。もっといえば、そういう事件が万一起きたときには、専門職団体で保証ないし損害の補填をしてもらえると心強そうだ。

そういった要望に早くから応えていたのが、司法書士の団体(公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート)だ。成年後見制度における包括補償保険という枠組みで、登録司法書士の故意による財産侵害に対しても保険金が下りるようにしている。1名500万円まで、同一年度内2000万円までなどという限度があるが、その姿勢は評価に値するだろう。士業の損害賠償保険は通常、気を付けていてもやってしまうかもしれない過失により損害を与えた場合のものだ。故意による財産侵害の保険など、個々の誠実な司法書士からすれば、自分がやるはずがないことについて余計な保険料を負担するだけだからだ。

 

 弁護士団体も昨年に追随

他方、弁護士はというと、上記のような士業の損害賠償保険の理屈からなのか、最近まで、故意による財産侵害の保険制度を設けてこなかった。それはそれで理解はできるが、やはり利用者からみれば、信頼できる弁護士に当たるかどうかは運次第なのであり、保険でそのリスクをカバーしてほしいところだろう。

それで、弁護士の団体もついに作ったのが、弁護士成年後見人信用保証事業だ。

全国弁護士協同組合連合会(全弁協)が保証人となり、弁護士成年後見人の不正による損害賠償債務を保証し、着服・横領の被害者の被害を弁償してくれる。保証額は弁護士1名当たり3000万円を上限とし、被害者が複数いる場合は上限枠内で按分するという。全弁協は保険会社と保険契約を結び、保険金から保証債務を履行し、保険料は、成年後見人として名簿に登録する弁護士が拠出するという仕組みらしい。

2020年10月1日から保証が始まったという。

www.zenbenkyo.or.jp

リーガルサポートの制度も含め、個々の案件にどのように適用されるかや、制度の詳細は個別に調べてもらいたいが、利用者からみれば、良い制度が始まったといえそうだ。

どんな弁護士や司法書士が後見人に選ばれるかは分からないから、ごくわずかな確率が悪く的中してしまい、横領する専門職に当たってしまうかもしれない。横領するような専門職は、食っていくのに困っていることが多いだろうから、横領した人からお金を返してもらうのは期待薄だ。その場合でも、各制度ごとに上限額はあるが、一定程度の財産は結果的に守れるということである。

 

4 まとめ

現在、成年後見制度は、利用促進計画の推進段階であり、この2021年が5か年計画の最終年となる。利用しやすい制度となるよう、各自治体に、地域包括支援センターなどの制度運用の中核機関が設置され、市民後見人の育成や、本人のニーズにマッチした後見人の選任へ向けた活動、後見人の福祉的判断の支援などを進めているところだ。

今回の弁護士団体の保証制度のスタートが、成年後見制度をより利用しやすい制度とする一助となればいいなと思う。