テレビ番組のマウスシールド問題を考える【透明なマスクで代替すべき】
今回は、2回目の緊急事態宣言を受けても、テレビでマウスシールドが使われ続けていることについて考えてみたい。
目次
1 マウスシールドでは感染防止対策として不十分
マウスシールドやフェイスシールドの感染防止効果が不十分だということは、今や広く知られるようになっている。
下記の記事に端的にまとめられているとおり、多くの人が付けている不織布マスクでは、吸い込み飛沫量は約30%、吐き出し飛沫量は約20%に抑えることができる。
一方、マウスシールドでは、吸い込み飛沫量は「小さなエアロゾルには効果なし」、吐き出し飛沫量も約90%とされており、実質的にはほとんど効果がなさそうなことが分かる。
このような理由から、例えば神戸市健康局が、マウスシールド等ではマスクの代替にならない旨を公的に通知したという報道もある。
2 相変わらずマウスシールドを付けているテレビ番組
しかし、テレビをつけると、相変わらず芸能人がマウスシールドを付けて旅番組などに出演しているのが目につく。
この状態は、2回目の緊急事態宣言が出た地域のテレビ局の番組でも変わらないようだ。
そのため、テレビは「やってる感」を出しているだけで、実質的な感染防止対策をとっていないなど批判する記事やつぶやき、ヤフコメなども散見される。
現在は東京で新規陽性者がほぼ毎日1000人を超える感染状況にある。
その中で、毎日マスクを付けている一般市民からすれば、電車でマスクをしていない人が乗っていれば近づきたくないし、マスクをしていても大声でしゃべっている人には20%の吐き出し飛沫を警戒している。
そのような中で、芸能人がマスクを付けずにロケーションを行っている様子を見ると、近くにいるであろうスタッフや、話しかけられる一般人などへの感染拡大を懸念するのは当然だろう。また、テレビに影響されやすかった若い時分や他人を思い出して、マスクは不要なのではないかというような誤解を広げかねないと心配にもなるだろう。
3 テレビでマウスシールドが使われる理由の考察
では、テレビでマウスシールドが使われる理由は何だろうか。感染防止にはマスクのほうが効果的であることは、テレビ局スタッフも当然分かっているはずだ。それでもなおマウスシールドを使う理由があると考えるのが合理的だ。
芸能人が顔を売るため
まず、「芸能人は顔が売れてなんぼ」ということが考えられる。
マスクをしていては目から下が見えず、そのままでは顔を覚えてもらいにくいのは明らかである。
顔が十分に売れている芸能人なら、マスクをしても問題は少ないが、それでも新たなファン獲得には支障が出るかもしれない。また、共演する新人タレントだけマスクを付けないのも不自然になるだろう。
マスクをつけないことでファンが付くどころか視聴者の反感を買うおそれもあるが、出演者が揃ってマスクをつけていなければ、その中での比較は起きない。炎上商法などもある世界であり、悪名は無名に勝るという考え方もありそうだ。
ついでに言えば、このマスク社会は、目の化粧技術の向上も相まって、人の顔の美醜に大きな差をつける要素が実は鼻から下の部分であることを明らかにしたのではないかという気もする。せっかく容姿のいい芸能人にとっては、必死で手入れしている綺麗な肌や、一般人に比べて高く綺麗に上がる口角のラインや、横顔の美しいEラインを映してもらえないのは残念だろう。
表情での表現を伝えるため
「ワイプ芸」などもあるとおり、テレビ出演者は撮られる表情も十分に意識している。
そのような人々にとっては、目と眉毛の変化だけでは、表情で伝えられる表現が相当乏しくなるように感じられるかもしれない。
聴覚障害のある視聴者のため
テレビは限られた良質の電波を利用してほぼ全世帯にリアルタイム性のある情報を高画質の動画で届けており、公共性の高いメディアである。
そのため、聴覚障害のある視聴者も十分に意識して放送する必要がありそうだ。
すべての番組で手話通訳者を付けることは難しいのか、現状はそうなっていない。
骨伝導イヤホンもあるし、字幕でフォローすることもできるが、なおも口の動きが見えるようにするのが役に立つ場面もあるのかもしれない。
番組ごとの個別事情
ほかにも、番組のスポンサーが口紅のCMを出しているとか、マスクを忘れる非日常の演出が必要だとか、いろいろな理由がありうる。
4 透明なマスクがある
以上のように、考察レベルでも、テレビ側がマウスシールドを選択する理由・メリットはいくつか考えられる。
しかし、そのために、マスクに疲れつつも自分と他人の感染防止のために、コロナと最前線で戦う医療従事者のために、また、他人の目を気にするがために、マスクをし続けている一般人に、余計な反感を買わなくてもいいのではないかと思う。このマウスシールドのデメリットは、感染が拡大するにつれて大きくなるだろう。
マウスシールドのメリットを維持しつつ、感染防止対策として反感を買わないレベルを達成するため、「透明なマスク」を使うことが考えられないか。
これなら、顔を売ることもマウスシールドと同程度に可能だし、表情での表現もできるし、聴覚障害のある人に口の動きを伝えることも可能だ。
問題はコストかもしれないが、マウスシールドもマスクに比べそれなりの値段がする現状、透明なマスクとはたいして変わらないだろうし、そもそもテレビ番組の製作費などに比べればかなり安い部類だと思う。
例えばこのような商品がある。1,980円というのがいつまでの割引価格なのか不明だが、テレビ放送側にとっては大きな金額ではないだろう。
なお、この記事はいわゆる案件ではなく、この透明マスクのレビューはしないし、特にこれがいいと言っているわけではないので注意されたい。