刮目呂蒙のブログ

都内在住の30代男です。時事問題や生活改善情報から、自分の周りのことまで。たまに持病(潰瘍性大腸炎)のことも。

やる気の出し方【意志の力を信じるな】

いよいよ今年度も受験シーズンが来た。受験生の諸君は、うまく勉強し続けているだろうか。

直前なのにやる気が続かない、何のために勉強するのか分からないし…将来役立つ内容とも思えない…という人もいるだろう。

何のために勉強するのかなどはさておき、この記事では、やる気の出し方について解説してみたいと思う。

なお、記事の信ぴょう性を担保するため、筆者は、福岡県のトップ層ではない公立高校から現役で東京の国立大学へ進学したり、難関といわれる国家試験を突破したりした経験があることを付記しておく。

 

目次 

1 大半の人がやる気を出せない、出し続けられない

およそ大学受験に限らず、何か「成し遂げたいこと」がある人は多い。

しかし、思いどおりに努力し続けられる人はごく限られる。

例えば、幼少から大好きな将棋を続け、一生の仕事にしているプロ棋士でも、「継続する力」がある棋士こそ尊敬できるかのような発言が多いし、「少し頑張れた時期には大きな結果が出せた」という趣旨の発言も多い。つまり、周りはそれほど頑張れていないということである。

それだけ、思いどおりに努力して成し遂げたいことを実現するというのは難しいのだ。

要するに、やる気が出せない、続かない人というのは実に多いのである。

 

2 「やる気」の問題にしない

そもそもやる気とは何か。

  「進んで物事をなしとげようとする気持ち。」(デジタル大辞泉

「気持ち」ということは、成し遂げたい思いの強さ、熱意が大事だと考えたくなる。

実際、燃えるような熱意があるのであれば、この問題は解決といっていい。

しかし、この記事にたどり着いてくれた皆さんは、熱意というほどのものがないために困っているはずだ。

燃えるような感情がないのに、それを出せと言われても無理なものは無理である。

「なりたい自分を具体的に思い描くとよい」などと言う人もいる。しかし、多くの場合、それを言っているのは「なった」立場の快適さが分かった後のその人である。その人が努力できた本当の原因は、多くの場合別のところにあったりする(ものすごく貧乏な原体験など)。この方法は一時の馬力には繋がるけれども、続かないのが致命的な欠点である。

感情は、理性でコントロールできないからこそ感情なのだ。

つまり努力できないことをやる気(=気持ち)の問題にするのがよくない。

コンサル風にいえば、そもそも問題の論点設定を間違えているということになる。

 

3 努力を続けるコツは

ではどうすればいいのか。

問題を分解する

まず、問題を次のように簡単に分解する。

  1. 「成し遂げたいこと」の実現に必要な段取り(何をすればいいのか)を逆算的に確認し、
  2. 「すべきこと」を順に実行していく

このとき、上記1.はもちろん正確に逆算するのがより望ましいが、ある程度アバウトであっても構わない。

例えば、「次の数学のテストで90点以上を取りたい」として、そのためにはアバウトに「数学をあと5時間勉強すればいいんじゃないか」とか適当に設定してしまってよい。急な用事が入ることなども想定して少し緩めに作ってもいい。さすがに短すぎるのは問題だが。

 

実行のための環境や仕組みを作る

次に、上記2.「すべきこと」を実行していくための環境や仕組みを作る。

もう少しかみ砕いて言うと、上記の例で、次の数学のテストまであと7日あるとすれば、最初の5日で1時間ずつ勉強すれば「5時間の勉強」を達成できる。

であれば、今後5日間は、例えばスマホや、部屋のテレビのアンテナケーブルを外して親に預けたり、漫画を段ボール箱に詰めてガムテープで密封したりして、勉強以外に楽しいことが「しにくい」(するためには面倒な行動を要する)環境を作る。

あるいは、5日間、数学を1時間ずつ勉強できた暁には、大好物や欲しいものを買ってもらえるように設定する。逆に勉強できなかった日があると、スマホが返却されるまでの期間が1日延びるように設定する。

 

要するに、自分が一番嬉しいことを報酬として設定したり、自分が一番嫌なことを罰として設定したりする。その実効性を高めるために、必要に応じて親や他人を巻き込んででも違反のハードルを高くするのだ。

 

違法なことや公序良俗に反することでなければ、動機づけは何でも構わない

野球がうまくなりたいことの動機が、「野球が好きだから」とか「見る人に感動を与えたいから」などの純粋で堂々と言えることでなくても全然いい。

「お金が稼げるから」、「女子アナと結婚したいから」で全然かまわない。「青山に土地を買いたい」でも全然いい。大事なのは、必要な努力を実行し続けることだけだ。

 

続けていくうち「継続力」がついてくる

こんなふうに実際に数学の勉強を1時間×5日間やってみると、実際に90点取れそうなのか、もう少し努力が必要なのかが分かってきたりする。また、数学が前より解けるようになって少しだけ楽しくなったりもする。授業で先生が言っていることが前より分かるようになったり、他の人が当てられて答えられない問題も内心分かって優越感を得られたりもする。他人に教える機会があればなおよい。

そんなふうになればしめたもので、勉強を続けるハードルは無勉当時よりもはるかに下がっている。人間としてどうかと思う感情の部分も含めて、すべて努力をし続けるためのパワーにしてしまおう。成し遂げたいことを成し遂げてから、あとで人格は矯正することにしておけばいい。

 

4 「やる気」=意志の力を信じない方法

こんなふうに継続のコツは環境づくりと報酬設定だという話は、

経済評論家の勝間和代さんがすでに発信済みだったようだ。勝間さんのブログやYouTubeなどで、「仕組み」などと入力して検索すれば、この手の話題は相当数出てくる。

なるほど経済学は「インセンティブ」全盛の時代だ。その最先端アメリカでも、「incentivize」インセンティブを与える、動機づけをする)という単語の出現頻度がこの10年程度で急増しているそうだ。

単純な課税・罰則や補助金論だけでなく、人間心理を巧みに突いた行動経済学までも駆使して、いかに人にやる気を出させる仕組みを作るかを考え抜いている。経済学を主戦場にする人からすれば、やる気の問題に見える場面で、意志の力ではなく、環境や報酬による仕組み作りを重視するのは、もはや常識の類らしい。

意外だが、男気溢れる元広島カープ黒田博樹投手も、著書『決めて断つ』を読むと、勝間さんが言っているのとほとんど同じような「物事を成し遂げるための仕組み作り」を意識的にか無意識にか、してこられたことが読み取れる。すなわち、報酬や恐怖によるやる気のシステム化、目標から逆算した段取り・階段の見える化、できた成果の見える化などである。

 

5 カラクリを自覚してしまっても大丈夫

経済学などというと急に、頭でっかちな人間が考えた小賢しいやり方で気に食わないと感じる人も、もしかしたらいるかもしれない。

また、こういうメタ知識というかカラクリを知ってしまったことで、かえって努力できなくなる気がする人もいるだろう。言ってみれば、自分の人間らしい感情を使って上手に騙そうとする仕組みを作っていることを自覚してしまうわけであり、自分の中のネタバレ感が「実行する力」をそぐわけである。

確かに、上記の例でいえば漫画のガムテープ張りなどは、自分にガムテープをはがす「めんどくささ」を課すことで質的量的に心理的抵抗を感じさせて漫画への逃げを止めようとする仕組みであり、カラクリを知ってしまうことでその効果が半減するだろう。

そういった面は確かにあるからこそ、「他人を巻き込む」などして、カラクリを知ろうが知るまいが、実行しなければならない、違反のハードルが高い環境を作ってしまうのが得策である。

もっとも、優越感などの感情は、カラクリを知っていようがいまいが関係なく自分をいい気分にしてくれて次への継続力につながる。それに、そのカラクリに沿って自分が実際に努力できることによって、自分のカラクリ設定の上手さについて良い気分になり、より継続力が増す面が大きいように思われる。また、うまくいかなくても、むしろカラクリの自覚を前提にした上手なカラクリ設定を試行錯誤することで、全体として進歩することができる。そのことに喜びを感じるようになれば、長い目で見れば大きく成長できる。

 

6 まとめ

ここまで書いたが、肝心なのは、自分にとって効果的なように上手に環境や仕組みを作ることである。

「抽象的にやる気を出し続ける」ことよりは簡単だが、この仕組み作りもなかなか難しく、一筋縄ではいかない。

もっとも、自分をよく知ってうまく仕組み作りできれば、今後いろんな努力につなげることができるので、応用範囲が広い

それに、仕組み作りという問題に落とし込むことで、試行錯誤ができるので、目に見えて進歩につながる

是非、やる気の問題を仕組み作りの問題に置き換えて、自分の成し遂げたいことをうまく成し遂げていってほしいと思う。