刮目呂蒙のブログ

都内在住の30代男です。時事問題や生活改善情報から、自分の周りのことまで。たまに持病(潰瘍性大腸炎)のことも。

民事訴訟法の改正案について【電子化・IT化】

こんにちは呂蒙です。

先日の少年法改正に続いて、今日は、民事訴訟法の改正案について。

下記のとおり、中間試案のたたき台がまとめられました。今後はこれを土台にして議論されるでしょう。

法務省:法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第9回会議(令和3年2月19日開催)

大雑把にまとめてみます。正確性はありませんので、これを鵜呑みにはしないでくださいね。

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1 訴訟記録の電子化

今は書面が冊子につづられている訴訟記録。これが原則として全面電子化されます。裁判所の事務管理システムというシステムサーバの中で管理保存されるようです。

訴状などの提出もその他の書面の送付も、原則として電子化するという前提で、例外的に紙が残る場面が議論されているようです。

一番大きいところは、裁判の一番最初、訴状を被告にどう送るか。

訴状は電子ファイルを裁判所に提出し、原告側は併せて連絡先のメールアドレス等を裁判所に届け出れば、原告側と裁判所とのやり取りは電子化できます。

しかし、被告のメールアドレスは不明。原告が知っているアドレス(宛先)を裁判所がそのまま使うかというと、訴訟詐欺などがあるのでそうもいかないでしょう。

そこで、訴状は例外的に、電子ファイルをプリントアウトしてその紙を被告の住所に送るか、訴訟提起されたよという通知の紙を被告に送って、被告にメールアドレスの届け出を促し、そのメアド経由で訴状をシステム送達(下記)するか。

被告は負け確定の訴訟では負ける時期を引き延ばしがちなので、ひとまず一方的に送りつける形のほうがいいのかどうか。

なお、いったんメールアドレス等の届け出がされた場合は、それ経由でアクセス権を付与してアクセス可能になる裁判所の事務管理システム上にアップされた送達用文書ファイルを当事者が閲覧した時に、送達の効力が生じるようです(システム送達)。当事者がさぼっていつまでも閲覧しないときは、閲覧可能になってから何日後、とかにも送達の効力が生じるようですね。

なお、送達といえば、公示送達として裁判所の掲示板に「書類を保管してますよ」と掲示する制度は廃止され、裁判所のウェブサイト等にその旨記載されるようになるようです。

 

残された課題は例えばこちら。

・本人訴訟にどう対応するか。ITが分からない人の裁判を受ける権利を奪わないようにしつつ、システム全体の利便性を高めたい。紙での訴訟手続を選択的に併置するか、それとも、例外として位置付けるか。

・裁判所のシステム不良等で訴状のシステム上の受理が間に合わなかった場合、時効の完成を阻止できるか。念のため紙で訴状を提出することを許すか。

・不正なプログラムを組んで、訴訟救助の申立てをしつつ訴訟を起こしまくる当事者の不当濫訴を防止するために、訴訟1回につき数百円のデポジット制を導入するか。

 

2 審理手続のweb化

口頭弁論が法廷で双方web会議で実施されるようになったり、

弁論準備手続や和解手続や進行協議手続が、双方web会議や双方電話会議で実施されるようになったり。

鑑定や検証などの証拠調べ手続もweb化されるようです。

3 判決書の電子化

判決書も今は紙ですが、電子化されて、裁判所の事務管理システムで送達されるようです。

4 新しい審理手続

原告と被告の双方がちゃんとメールアドレス等を裁判所に届け出た上で、双方合意又は異議がないことなどを前提として、「裁判の審理を6か月以内に限り、証拠をすぐに取り調べられるもの(疎明)に限る」などの新しい迅速審理手続ができるようです。現行の労働審判に似ている制度とのこと。

また、裁判所が当事者双方の事情等を衡平に考慮して、適切な和解を決定する、和解に代わる決定という制度も導入を検討されるようです。民事調停の調停に代わる決定や、家事調停の調停に代わる審判に似ている制度とのこと。なお、和解については、第三者の参加や、和解調書の職権送達など、細かい規定が加えられるようです。

5 訴訟記録の閲覧制限

公開で行われる訴訟の証拠でも第三者に見られたくないものは、営業秘密だけでなく、企業の独自の制度や工夫など多数にわたるようです。それを第三者に見られないように、相手方当事者が第三者に正当な理由なく開示するのを防ぐ制度(開示しない義務)を設けるようです。

 

いろいろ変わりそうですね。電子化の骨格となる事務管理システムがちゃんと動かないと困るでしょうから、そこにも注目かもしれません。

 

その他 少年法の続報とか

なお、少年法については、先日こちらの記事に書きました。

katsumoku.hatenablog.com

最近また下記のように報道されました。まだ閣議決定・法案提出の段階ですが、このまま国会を通れば、改正後の18歳・19歳は「特定少年」という呼び方になるようですね。

www3.nhk.or.jp