ふるさと納税を実質金利30%の定期預金化する活用法【デメリット4つ】
今回は、ふるさと納税の超手軽なお得活用法を紹介する。
面倒そうだし怖い気もする税金の制度だが、全然怖くないから安心してほしい。
もちろん、公平を期すため、きちんとデメリットも検討した。
目次
1 超低金利時代の超お得な制度
ふるさと納税。やった人は誰もが「得だ」と断言している。
が、やったことがない人にはハードルが高そうに見えるのも事実。
「そこまでしなくていいや。まあ、正直そこまで困っているわけでもないし。」
その気持ちも分かる。いま使ってないけど困ってないし、今後も、使わなくても困ることはない。
ただ、ふるさと納税は、「手続をすればほぼノーリスクでかなりの得ができる制度」なのだ。
得の度合いは使い方次第だが、大して工夫しなくても、年利30%相当の利息がもらえて元本も1年半で返ってくる定期預金と同等にできる。
手続をする手間は大したことがないし、勉強にもなる。そして、使い慣れればさらに早くなる。
ふるさと納税は、この超低金利時代で最もお得な公的制度の一つだといっていいと思う。
2 ふるさと納税制度の概要
寄付したお金は返ってくる
ふるさと納税は、自分の住んでいない自治体に寄付したお金が、「所得税の還付」ないし「住民税の減額」の形で返ってくる制度だ。
基本的には、翌年の6月から翌々年の5月までの1年間、住民税が減額される形で返ってくる。ふだんサラリーマンであれば、住民税は給料から源泉徴収されているから、住民税が安くなれば、給料の手取り額がその分上がる。
所得税の還付の形で返ってくるのは、確定申告をした場合で、寄付したお金の所得税率分(多くは1~3割)だ。残りの7~9割は、やはり住民税の減額の形で帰ってくる。
手軽な「ワンストップ特例」を使う場合は、全額住民税の減額の形で返ってくる。が、確定申告も一度分かれば全然難しくないし、「ワンストップ特例」は寄付先の数が限られるから、確定申告するのがオススメだ。
差し引かれるのは2000円だけ
誤解が生じやすくてハードルになっている点の一つが、「2000円引かれる」という部分だ。「1回寄付するごとに2000円引かれるんじゃないか」と誤解されがちらしい。
誤解を解くには返金額を説明すれば分かりやすい。
返金額は、「寄付総額-2000円」だ。
例えば、6か所の自治体に、1万円ずつ寄付したとすると、寄付総額は6万円。
返金額は、5万8000円だ。
「(1万円-2000円)×6=4万8000円なんじゃないの?」と誤解しないでほしい。
返金額には年収等に応じた上限がある
なお、いくら寄付しても全額(-2000円)返ってくるわけではない。自分の年収と家族の状況や他の節税制度の利用状況次第で上限が決まってくる。
下記の総務省のサイトを参照して上限を厳密に調べることもできるし、私はそうしている。
だが、さすがにちょっと面倒だ。
なので、ふるさと納税のポータルサイト(楽天ふるさと納税、さとふる、ふるさとチョイス、ふるなび等)で、上限額を調べるシミュレーションをして、そこで出た数字より少し少なめに寄付をするのがオススメだ。
なお、医療費控除など、節税制度を使っている分だけ、上限が下がるという関係は覚えておこう。これらの制度をたくさん使っている自覚があるなら、寄付額はシミュレーションより相当少なめにすると安全だ。
寄付額に応じた返礼品がもらえる
上記した寄付金の返金とは別に、返礼品がもらえる。
つまり、返礼品の価値が2000円を超えるなら、純粋にお得だ。
「返礼品を2000円で買う制度」だと理解してもいい。
例えば1万円寄付すると、だいたい2000~3000円相当の返礼品がもらえる(これを「還元率20~30%」などと言ったりする。)。
つまり、概ね総額1万円以上寄付するのなら、ふるさと納税は純粋にお得な制度だといえる。
なお、還元率の上限は30%と総務省が決めているようだが、もっと価値の高い返礼品を出している自治体も探せばあるという話も聞く。真偽は不明だ。
ポータルサイトごとにさらに特典がある
ふるさと納税のポータルサイトは、自分のサイトを通じてふるさと納税をしてもらって自治体から手数料収入を稼ぐため、納税者に様々な独自の特典を用意している。
楽天ふるさと納税なら、楽天市場での通常の買い物と同様の楽天スーパーポイントがもらえるし、5と10の付く日のポイントアップや、ショップ買い回りなどのポイントアップキャンぺーンも利用できる。期間限定ポイントでふるさと納税をすることもでき、ポイントの通貨代替性が高く、基本的に一番オススメだ。
ふるなび、さとふる、ふるさとチョイス、auPAYマーケットふるさと納税なども、アマゾン商品券などと絡めた様々なキャンペーンをしていたり、Pontaポイントで納税できたりする。自治体と提携して独自の返礼品を用意しているサイトもあるので、いろいろ楽しんでみるといいだろう。
基本的にはどこを選んでもよく、さらに得をする度合いが少し違うだけだといえる。
3 「年利30%、1年間かけて払い戻される定期預金」にする使い方
返礼品の選び方は自由だが、私は基本的に次の4点で決めている。
① 生活必需品を選ぶ(米、鶏肉など)
② 普段スーパーで買うものと同程度の品質のものにする
③ ふるさと納税ポータルサイトのランキングを大いに参考にする
④ 送られる時期を調節して適時に適量が届くようにする
順にみていこう。
① 生活必需品を選ぶ(米、鶏肉など)
今後1年間に必ず買う生活必需品を選ぶことで、「必ず使うはずだったお金がその分確実に浮く」。
買わなそうなものをこの機会に選ぶという使い方ももちろんある。だが、それだと無駄になる可能性も相当ある。生活必需品なら、その心配がない。お金をもらうことと実質的に変わらなくなる。
「還元率(返礼率)」を追求すべしというようなサイトもあるが、私は賛同しない。いくら実質還元率60%(1万円の寄付で6000円相当のものがもらえる)としても、普段買わなそうなものなら無駄な買い物であり、普段買う還元率30%の返礼品をもらう機会の損失だ。
ちなみに、私は潰瘍性大腸炎のため基本的に牛肉を食べないし、もし食べられるとしても特別な日でない限り安い輸入牛でいいという考え方だから、ポータルサイトの特別な契約で特に還元率が高く設定されている代わりに品目の種類が国産牛肉やホタテなどに限られる「ふるさと応援特別キャンペーン」のようなものも全然使わない。
② 普段スーパーで買うものと同程度の品質のものにする
これも上記①と同じ意味だ。無駄に高級なものにせず、コスパのいいものにする。要するに、お金をもらうのと価値的に変わらないようにすることに徹する。
③ ふるさと納税ポータルサイトのランキングを大いに参考にする
これはどういう意味かというと、みんな基本的にコスパのいいものを欲しがるので、品目ごとのランキングの上位には、コスパのいい、スーパー品質と同程度又はちょっと低いものが並ぶことが多い。
そうでない場合もあるが、初心者はランキングを参考にしつつ、分量と金額を比較する方法で十分だ。
なお、各返礼品のレビューはほとんど主観的なものばかりなので、それほど参考にならない。ひどいレビューのお米でも、十分おいしかったことがあるが、私はレビューを書いたことがない。
④ 送られる時期を調節して適時に適量が届くようにする
返礼品が送られる時期を選べるかどうかは気にしよう。
米が家に同時に40kgあっても食べきれないし、さすがに保管に場所をとる。
冷凍の鶏むね肉も8kg程度なら冷凍庫に入るが、20kgだと入りきれず、不自然に食べすぎたり、処分したりする羽目になる。
「得をするために無理をしない」ことが私の信条であり、自然に生活する中で無理せず得をしたい。
そのためには、多少還元率を犠牲にしてでも、送られる時期を調節して、適時に適量が届くようにする。送られる時期を調節できる返礼品はそれほど多くなく、だいたい近め(繁忙期の12月でも2か月以内)に発送する予定になっているものが多いので注意だ。
私は、返礼品ごとに少しずつ発送時期をずらすことで、1年中、ほぼ間断なくお米が届くように設定してある。保育園児の息子が2人いてお米は大量に消費するが、昨年のふるさと納税のおかげで、今年はたぶんほとんどお米を買う必要がない。なお、昨年も、一昨年のふるさと納税のおかげで、お米を買ったのは繋ぎの2回程度で足りた。
私のふるさと納税(お米)の返礼品の選定例(令和2年分)
令和3年1月上旬 三重県明和町のお米 20kg(1.6万円)
1月下旬 佐賀県みやき町のお米 12kg(1万円、Pontaポイントで寄付)
2月中旬 熊本県高森町のお米 13kg(1万円)
5月下旬 茨城県境町のお米 20kg(1.6万円)
6月下旬 茨城県境町のお米 20kg(1.6万円)
※佐賀県みやき町以外は楽天ふるさと納税で平均14%の楽天ポイントが別途還元
ふるさと納税をする時期
ふるさと納税をする時期は、毎年12月の月給の後にしている。
その年の大まかな年収が分かり、上限額が計算できるからだ。
職場によっては、12月中に年末調整の結果を記した帳票や源泉徴収票がもらえるから、可能であればそれを見るのがより正確だ。
CMでいわれているとおり締め切りは12月31日だから、その時期にふるさと納税している人が多いだろう。
もっとも、前年の年収を参照すれば、だいたいどの程度が上限か分かるから、失職する危険がない限り、年初や途中でも、少額ならふるさと納税を利用して全然かまわないと思う。
寄付の証明書類は絶対になくさないこと
寄付の後数週間以内に自治体から送られてくる寄付の証明書類は、必ず保管しておくことだ。これは寄付金の返金を受けるために必要不可欠だから、絶対に忘れてはいけない。
実質的に「年利30%、半年後から1年半後の間に順次払い戻される定期預金」を達成する
このような使い方で、価値的に見れば、年利30%の1年定期預金と同じようなものになる。
例えば、12月に10万円を寄付したら、
ワンストップ特例を使う場合、半年後の6月から1年半後の5月までの間に、住民税が9万8000円安くなり、その分給料の手取り額に上乗せされて返ってくる。
確定申告の場合、所得税率15%であれば、申告後の4月か5月に約1万5000円が所得税還付金として、申告時に指定した口座に振り込まれる。加えて、6月から次の5月までの間に、住民税が約8万3000円安くなり、その分給料の手取り額に上乗せされて返ってくる。
さらに、生活必需品が約3万円分もらえる。つまり、1年半で、自分の手元に2万8000円多く残すことができる。
(10万円 → 12万8000円)
なお、楽天ふるさと納税をうまく使って例えば14%のポイント還元を別途受けるなら、1万4000円分のポイントもさらにもらえる。
(10万円 → 14万2000円)
4 ふるさと納税のデメリット
ふるさと納税制度にもデメリットはある。私は上に詳述したメリットのほうがはるかに大きいと思うし、時間給のサラリーマンにとってはほぼ共通してそう言えると思うが、一応留意しておこう。
なお、「使い方が分かりにくい」などはただの使う前のハードルであって、使った上でのデメリットではない。
使った上でのデメリットは、次の4つだと思う。
寄付したお金の流動性がなくなる
寄付したお金が戻ってくるのは翌年6月~翌々年5月だ。
例えば10万円寄付したら、すぐにその10万円を使うことはできなくなる。手元資金がごく少ない人や、借金をしている人にはおススメできないということになる。
余談だが、借金している人は、よほど計画的にレバレッジをかけているとかでない限り、ふるさと納税などするよりもさっさと返済して、余計な利息の支払をやめたほうがいい。
お金の戻り方が給料の形
これはコッソリ節税したいサラリーマンにとっては由々しき問題になりうる。
自分のお小遣いやへそくりからふるさと納税したら、住民税減額による返金分が給料に上乗せされてしまい、配偶者に給料が増えたと勘違いされ、お小遣いは増えないとか、家に入れるお金を多く要求されるとかで、家計としては得でも、家庭内の力関係次第では個人として損する結果になる。制度を説明しても(事前に説明しておいても)、制度が複雑に見えることと、家計の問題は感情的になりやすいこととが相まって、聞く耳を持たれないなんてことがある。
是非気を付けよう。
返礼品の品質が分かりにくい
返礼品のレビューは、全然ないか大量にあるという両極端なことが多く、大量にあるものでは上位のレビューにこれまた両極端な主観的感想が載っているのが通常だ。ほとんど役に立たないことが多い。
幸い、日本の自治体の返礼品なので、期待しすぎなければ、よほどのことがない限り普通に賞味できると思う。そもそも、超低金利時代に、おおかた10万円前後の元手で破格の利息を得ましょうというみみっちい制度なのだから、あまり細かいことは気にしないことだ。
返礼品の選定や確定申告などの手間
経営者や個人事業主と違い、時間給のサラリーマンにとっては、収入を自分の選択で増やすことが難しい。そういう人間なら、基本的に、出ていくお金を削るのが合理的だし、収入が発生しない時間に手続をすればお金が増えるというのなら、手間を惜しまず手続をしたほうがいい。
サラリーマン世帯の奥さんが、10円の価格差を削るためにガソリン代を気にせず車でスーパーをはしごする笑い話があるが、交通手段が自転車や徒歩であれば、やろうとしている方向性自体は間違っていないのだ。ただ、そんなことをするなら、ふるさと納税をするほうが効果が大きくて合理的だということだ。
返礼品選択の手間は、基本的にランキングを参考にできるからかなり省力化できることは前述した。
また、確定申告は、現代日本に生きる社会人の租税リテラシーを高めるのに打ってつけの手続であり、早くやってみることを勧める。ちょっと面倒だが、盲目的に源泉徴収されることに安住しないで、世の中の仕組みを早く知ったほうがいいと思う。「どういう人の税金を意図的に安くしているか」から、国の政策方針の根幹が見えるし、関係業界団体の政治的交渉力が垣間見える。ふるさと納税だけなら超簡単に確定申告できる枠組みになっているので、活用しよう。
なお、個人事業主は、確定申告がもともと必須だが、返礼品の選定に手間をかけるくらいならその時間をさらに事業に充てて収入を増やすという選択肢があるので、その選択の問題になる。もっとも、返礼品の選定はランキングを参考にすればたいして手間ではないし、手の空いている人に頼んでもいいだろう。
結局、このデメリットが大きくなるのは、そもそも手間をかけるべきほどの効果が得られない人、つまり寄付金額の上限がかなり低い人だということになる。自己負担の2000円で大した返礼品がもらえない人と言い換えることもできる。
5 まとめ
このように、ふるさと納税は、うまく使えば実質年利30%の金融商品と同等になる。
デメリットはあるものの、どれも大したものではない。
令和2年分のふるさと納税が終わったばかりで、令和3年分のふるさと納税は始まったばかりだが、この記事を参考にして、今後大いに活用する読者が現れることを願う。